皮膚のかゆみ

妊婦中の肌トラブルってなに??
その傾向と対応策

妊婦中はさまざまなお肌のトラブルが起こりやすいんです。

実は妊娠したから起こるというものは少ないのですが、いつもよりデリケートになっていることをお忘れなく。

妊娠で有名なものは「妊娠線」や産後の「脱毛」でしょうか?

どちらも妊娠によるものとはいえ、できることなら避けて通りたいのが女性の心理ですよね。

その症状やケアについてみていきましょう。

1.かゆみ

①妊娠性掻痒症(にんしんせいそうようしょう)

妊娠中期から後期に、全身にわたってかゆくなるタイプ
全妊婦の2~3%に起こるといわれています。

掻きむしってしまうと湿疹や色素沈着になってしまうこともあります。

かゆみは仕事が終わり帰宅したとたんに出てくることもあります。

これは帰宅後、食事や入浴でリラックスしたり体が温まったことによるものです。

リラックスすると副交感神経が優位になり血流がよくなるため、かゆくなりやすいです。

②妊娠性痒疹(にんしんせいようしん)

強いかゆみを伴うポツポツとした湿疹

妊娠初期~妊娠25週ごろに四肢に出現しやすく、ほとんどが産後に軽快します。

二回目以降の妊娠で発症することが多い
(初回から発症することもあります)

③妊娠性肝内胆汁うっ滞症

妊娠時特有の肝疾患
手のひらや足の裏に強いかゆみが出て全身に拡大していく

④多形妊娠疹(PEP、PUPPP)

はじめての妊娠の後期に多い
妊娠線の近くや体、四肢にできる
蕁麻疹のように赤みのある湿疹でかゆみを伴う

⑤アトピー性皮膚炎の悪化

もともとのアトピー性皮膚炎が妊娠によって悪化することがあります。
逆に良くなる場合もあります。

悪化する原因のひとつには、妊娠前より皮膚が乾燥しやすかったり汗をかきやすくなるなどが考えられます。

<原因>

・妊娠によるホルモンバランスの変化

プロゲステロンの増加により皮脂の分泌が活発になる
エストロゲンの増加による色素沈着作用でシミができやすくなる

・水分や栄養不足

つわりや好みの変化などで水分が十分とれなくなったり、栄養が偏ってビタミンBの不足が起こると肌が乾燥しやすくなります。

偏食では肌荒れなどの原因にもなります。

・妊娠によって胆汁の流れが悪くなり肝機能の低下
・つわりも含め生活の変化により、いつものケアが十分にできていないなど

<治療>

かゆみが出てきたら早めに受診することが大事です。

自己判断で市販薬を使って悪化することも多いので、専門家に任せて早く治しましょう。

ステロイド外用薬が一般的

時には胎盤を通さないステロイド内服薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬が処方されることもあります。

きちんと皮膚科で処方されたものは、妊娠の時期や症状に合わせて適切な量に配合されているので安心して治療しましょう。

薬を使うのが不安だからと使わず、掻きむしってしまうと悪化したり感染リスクが出てきます。

かゆみを抑えることが大切です。

<ケア>

☆お肌を清潔にする
☆保湿する
☆お肌への刺激を少なくする

・なるべくコットン100%の下着、服にする

締めつけずゆったりしたものがオススメ
普段使っている下着などではレースで痒くなる可能性もあるので
妊娠したらマタニティ用の下着に替えましょうね。

・シャンプーは刺激の少ないものにする

湯シャン(シャンプーを使わずお湯で洗うのみ)もオススメ
慣れてくるとキシキシも感じにくくなります!
髪本来のツヤも出てくるので妊娠を期にチャレンジするものアリ??

☆水分補給をしっかりとる

目標は一日2リットル!

糖分の多いジュースは体重増加や肌荒れなど悪影響が出やすいのでほどほどに。

つわりで飲めない時は少しずつ。
無理せずにいきましょう。

☆紫外線対策をしっかりする

日焼け止めをしっかりと使うこと。

特に妊娠初期はホルモンの影響でシミができやすいので、できる前にケアが大切です。

紫外線吸収剤不使用のものなど体への負担が少ないものを選びましょう。

*痒くても赤ちゃんには影響がないので、必要以上に神経質にならなくていいですよ。

ストレスなく過ごすことがかゆみにも影響しますし、赤ちゃんにとっても大切なことです。

2.妊娠線(線状皮膚委縮症)

妊婦の40~90%以上にあらわれるとも言われています。

お腹にスイカの縞模様のような線ができるもので、妊娠5ヶ月ごろから出てくることが多いです。

まれに出産時にできることも?!

一度できてしまうと白っぽくなるものの消えることはありません。
(どうしても消したい時はレーザー治療で消すことが可能)

*正中線といっておへそから恥骨の下あたりまで真っすぐにできる線で、妊娠線と間違われやすいものもあります。

産後には消えるのでご安心を。

<原因>

・急激な体型の変化による皮膚の急激な伸び

母体と赤ちゃんを守るために脂肪がつきやすく、皮下脂肪と真皮にひび割れが起こります。

・ホルモンの影響

妊娠中に増えるグルココルチコイドという副腎皮質(ステロイド)ホルモンの影響で、真皮のターンオーバーが抑制され、コラーゲンが減少します。

結果、弾力を失ってしまうことで断裂を起こしやすくなります。

<部位>

おなか、乳房、お尻、太もも、足の付け根など脂肪がつきやすい場所

<できやすい人っているの?>

・多胎妊娠

・経産婦さん
一度出産を経験しているので皮膚の伸びが良く、
お腹が大きくなるスピードが速い。

・皮下脂肪が多い人
皮下脂肪は横方向への弾力性に乏しく皮膚の伸びについていけない。

・加齢
皮膚の弾力性が落ちている。

・小柄・やせ型の人
もともとの皮膚面積が小さいため、引きのばされる率が高くなる。

・身内に妊娠線のある人がいる
遺伝ではないけれど生まれ持った体質や肌質が影響することもある。

・乾燥肌
水分量が減っているため弾力性に欠ける。

<予防・ケア>

・急激な体重増加を避ける
急激に体型が変化すると皮膚もついていけず妊娠線ができやすくなります。

また妊娠を通して体重管理においても大切なことです。

特につわりが治まった直後は要注意!

嬉しくなってつい食べ過ぎてしまうことも多いので気を付けましょうね。

・保湿
とにかく保湿に限ります!

乾燥しやすい季節や妊娠後期などは一日二回でもOK
トイレに置いておいてその都度、保湿すればバッチリ!

入浴後にしっかりと行うことでリラックス効果も上がります。
摩擦を避けるためにもたっぷりと手に取り、優しく伸ばすこと。

おなかは時計回り、反時計回りにクルクル下腹部から大きなハートを描くように、太ももは下から上へ、そけい部(足の付け根)は上下に乳房もクルクルと

いずれにしても、優しくこすらないようにするのが大切です。
赤ちゃんとの会話を楽しむつもりでリラックスして行うのがベスト。

クリームvsオイルどっちがいいの?

・クリーム

肌になじみやすい、摩擦とならないように伸びのいいものを選ぶこと。
低刺激のものを選びましょう。

・オイル

クリームより保湿力が高くよく伸びる。
(べたつきが気になる人もいるかもしれません)

クリームとオイルのW使いでしっかり保湿もオススメ

まずクリームをお肌になじませてから、さらにオイルを重ね塗りする。

乾燥肌の人や乾燥しやすい季節に◎

どちらを選んでも皮膚への刺激が少ないタイプにすること。

自分の好みに合うものやコスパも踏まえて、長く使えるものがいいですね。
(高価なものを少量時々つけても十分な効果は発揮されません・・・)

妊娠中はにおいにも敏感なので店頭で確認することも大事です。

妊娠線クリームとして販売されているものは、アルコールや石油系界面活性剤不使用のものも多いので、より安心して選びやすいでしょう。

・栄養補給

良質のたんぱく質を心がけましょう。
皮膚を健康に保つキノコ類に多いナイアシン
皮膚のコラーゲン生成に役立つビタミンCは積極的に!

・運動する

筋肉があることでお腹が急激に大きくなることを抑え真皮への負担を和らげられます。

また新陳代謝があがることでお肌のターンオーバーを促進ことにも繋がります。

ただし、ハードな運動は避けウォーキングやヨガなど無理のない範囲で行いましょう。

*子どもを産んだ証なので本来は恥ずかしいものではありません。

思い出にしておくのもアリ

*妊娠線を予防するには保湿!!

毎日こまめにコツコツと続けましょう。

3.毛が濃くなる

妊娠中はホルモンの影響で毛周期が変化する。

成長期に入る毛が多くなり、一時的に毛が増えたり濃くなることがあります。

4.毛が抜ける(分娩後脱毛症)

産後2ヶ月~だいたい半年で回復することが多い。

妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンにより毛周期が「成長期」にあったため、増毛していたのに対し、

産後はエストロゲンが急激に減少するため成長期だった毛が一気に「休止期」に移行することで抜け毛が増えてしまう。

生理的なものなので心配はいりません。といっても、産後の脱毛はショックですよね。

少しでも脱毛に備えるためには・・・

・ストレスのない生活にすること

・髪の元になる栄養素である良質のたんぱく質をとること

*1)毛周期とは?

・毛母細胞が盛んに増殖する「成長期」4~7年
・細胞分裂が停止する「退行期」2~3週
・髪が抜け次の毛包を作るまでの「休止期」

数カ月のサイクルを繰り返しています。

5.にきび

妊娠中はプロゲステロンというホルモンが多く分泌します。

このホルモンは皮脂の分泌を活発にするため、にきびができやすいとされています。

6.色素沈着・シミ

こちらも同様に妊娠中のプロゲステロン増加により起こりやすいです。
メラニンの分泌量を促す働きがあるためです。

肝斑、乳頭や乳輪の黒ずみ
出産後に消失することが多いですが残ることもあります。
摩擦や紫外線を避けましょう。

★こんなときどうする?

妊娠中のカラーやパーマはしてもいいの?

特に問題ありませんが、妊娠中は、においに敏感になっていたり皮膚もデリケートです。

いつもの行きなれた美容院へ行き、妊娠していることを伝えましょう。

カラーリング剤も、頭皮から少し離してつけるなど工夫するといいでしょう。

また、シャンプー時の不自然な姿勢や、長時間同じ姿勢でいることも妊娠前のようにはいきません。

体調のいいときになるべく短時間で終わるようにしてもらったり、途中で休憩を入れるといいですね。

まとめ

妊娠中はいつもよりデリケートな状態です。

保湿などのお手入れすることで、赤ちゃんとのおはなしタイムだと思えると楽しみながら過ごせると思います。

心配な時は健診の時に相談して早めにケアしていきましょうね。