腰痛

妊娠中のつらい腰痛…
上手につきあって産後も快適に過ごしましょう
その傾向と対応策

妊娠中の腰痛は多くの妊婦さんが経験しています。

初期から違和感や痛みがあったり、中には立てない・歩けないなんていう妊婦さんもいるほどです。

ほとんどの場合、お産と同時に治ります1割の方は産後も腰痛が治らないとも言われています。

また坐骨神経痛といって神経に何らかの原因で刺激されると痛みやしびれを伴うこともあります。

これは産後にも影響するので要注意!

たかが腰痛?されど腰痛です。

日常生活には問題ないけれど、痛みがある状態はつらいですよね。

妊娠中に腰痛が起こりやすい原因と対策を知って、少しでも快適な妊婦ライフを送りましょう!

<原因>

①女性ホルモンの影響

妊娠するとリラキシンというホルモンが分泌されます。

お産の時に赤ちゃんが狭い骨盤内をスムーズに通れるように、骨盤の関節や靭帯を柔らかくしますが大きくなったおなかを支える力も弱くなり腰に負担がかかりやすくなります。

②姿勢の変化

もともと背骨は自然なS字カーブを描いていますが、おなかが大きくなるにつれて上半身を反らせた姿勢になりがち。

そうすると腰まわりの筋肉に負担がかかり、お尻の痛みや太もものしびれを伴う腰痛も起こりやすくなります。

長時間の立った姿勢や座りっぱなしなど同じ姿勢を続けているのも腰痛の原因になります。

③筋肉が弱くなる・体型の変化

妊娠後期には子宮が大きくなり、みぞおちのあたりまで上がってきます。

子宮が大きくなると腹筋が弱まり、骨盤を支えている体幹の筋肉も伸ばされ腰痛の原因の一つになります。

体重が増えれば増えるほど腰への負担は大きくなるので、体重コントロールは妊娠高血圧症候群の予防だけではなく腰痛予防としても必要ですね。

大きくなった子宮は骨盤内で血管を圧迫し血流が悪くなりがちです。
そのことで腰や足などが冷えてむくみやすく痛みも出てくることがあります。

④臨月では前駆陣痛のことも

前駆陣痛とは?

陣痛の予行練習のようなもので臨月に入ると起こりやすい痛みで本陣痛とは異なります。

腹痛や腰痛を伴う痛みで、痛みは数秒から数分でなくなり持続しません。

夜、眠っているときに感じることが多いですが、いつの間にか寝てしまって治まっていたということがあります。

なかには数時間おきや何日かあいておこることも。気を紛らせたりリラックスすると治まりやすいです。

ちなみに本陣痛は気を紛らせても治まりませんから違いが判ると思います。

⑤精神的な不安など心の緊張

お産への不安、子育てへの不安など悩みは尽きないですがその不安が強い場合、体全体が緊張状態になってしまいます。

筋肉もこわばってしまうためになります。

<症状>

・姿勢により筋肉が炎症を起こしている場合

ジンジンと痛みを感じる、立ち上がりなどで痛みを感じやすい。
坐骨神経を圧迫しているときはしびれを伴うこともある。

・前駆陣痛*1)の場合

下腹部痛やおなかの張りを伴う痛み、腰回りが重たい感じ

<対策>

①姿勢に気を付ける

基本的にゆっくりと。

特にイスから立ち上がる時などは急に動くと腰に負担がかかってしまいます。

バッグなどの荷物も左右どちらかではなく、交互に持つなどの工夫でOK

・歩き方

胸を張って骨盤と肩が一直線になるようにする。
前かがみにならないように意識する。

背筋を伸ばしてみぞおちの辺りから足があると思いながら歩くと◎

腕は前に振るのではなく、「後ろに引く」と足が前に進みやすいですよ。

・寝るとき

仰向けにならない、妊娠後期は避けましょう。
マットレスは硬めにする。

痛みがある方を上にして横向きが◎
(下にすると神経が圧迫されてしまうため)
長時間同じ姿勢で休まないこと。

☆シムス位

妊婦さんにとってラクでおなかの赤ちゃんにも優しい姿勢です。

1)左を下にして横になる。
2)下にある足はまっすぐ、上にある足は軽く曲げる。
3)左の肩は引いてもOK(上半身だけうつ伏せのようになります)
4)クッションや抱き枕を脚の下に置いたりすると快適◎

・起き上がり方

一度横向きになり、膝を軽く曲げる。
下にあるひじをついてから反対の手で体を支えて起きる。

*腹筋を使って起きるのではなく、腕の力で起きましょう。

・座り方

骨盤が立つように座る。

床の場合は「あぐら」がオススメです。
腰への負担が少なくおなかを圧迫しません。

また骨盤が立つのも◎

お産の時にも重要な股関節のストレッチにもなりますので、ぜひあぐらの生活を!


最近はあぐらをかけない人も増えてきています。
イスの生活が多いことや股関節が硬いなどの理由です。

そういう場合は、フェイスタオルをクルクルと丸めてお尻の下へ入れると楽になりますよ。

脚を組まない方が骨盤のゆがみが出ないのですが、クセになっている場合は左右交互にするとバランスがとりやすいです。

ただし、長時間しないよう気を付けましょう。

→ラクに正しく座るコツ

1)椅子に深く座り、真上に両手を伸ばして背伸びをする。
2)そのままゆっくり手を下ろす。
3)顎は軽く引き肩の力を抜く。

背もたれとの間にクッションを置くとさらにラクチン!

・立ち方

おへその下あたりを意識して目線はやや上、遠くをみます。
顎は軽く引き肩の力を抜いて、背筋をまっすぐに。

→正しく立てているかチェック!

足首~肩~耳が一直線になっていますか?

1)壁に背中をつけて立つ。
2)後頭部・背中・お尻・かかとを壁につける。
3)足は軽く開いて力を抜く。

・下のもの、重たいものを持つとき

基本的に重たいものは持たないようにしましょう。
パートナーや周りの人に協力してもらえると理想的ですね。

下にあるものを取る時は腰から曲げるのはNG
ひざを曲げて立てひざをつくなど腰の位置を低くするのが正解です。

上のお子さんを抱っこするなども同じですよ。

②体を温める

シャワーは体の表面しか温めてくれません。

夏場も湯船につかって体の中から温まりましょう。
筋肉がほぐれて腰の痛みが和らぎます。

湯たんぽやカイロもじんわりと温かく楽になります。
やけどに注意して直接肌に触れないようにしましょう。

湯たんぽはレンジでチンするタイプが手軽で使いやすいですよ!
米ぬかや小豆など自然のものでできている湯たんぽはオススメ

③筋力アップ&キープする

妊娠中は安静にすることも多く筋力が落ちてしまいがちです。

適度な運動は筋力をキープし、お産への体力づくりや体重コントロールにも◎

便秘や肩こりにも効果的なのでぜひチャレンジしてみましょう。

ただ無理はしないこと!

お腹が張りぎみ、なんとなくいつもと違うなど感じたらお休みしてください。

・お散歩・ウォーキング

スニーカーを履いて、近所を散歩するだけでもOK
腕を大きく振って、なるべく後ろに振るイメージで。

かかとから着地して親指の付け根で蹴るイメージで歩くと足裏全体を使うのでラクに歩けますよ。

またパートナーと休日にのんびりお散歩するのは、特にオススメ!

リラックスしてお互いのコミュニケーションが深まります。

・マタニティヨガ、マタニティスイミング、マタニティビクスなど

安定期に入ったら医師の許可を得てから行うこと。
血圧や赤ちゃんの心拍数をチェックしてくれる施設もあります。

いづれにしても見学や体験してから始めましょうね。
水中は浮力があるので意外とラクです。

ヨガはポーズを覚えたり頑張るのではなく、呼吸を深くすることやリラックスがメイン。

リラックスしていればいるほど、関節も筋肉もほぐれていきます。

マタニティビクスは結構激しい運動なので、無理をせず行いましょう。

体力、持久力がつくので、もともと運動していた妊婦さんは心地いい汗をかけるでしょう。

運動初心者さんにはハードかも?

④マッサージやツボ押しをする

腰が痛いときに腰を押すと痛みが悪化することがあります。

ツボ押しの最大のメリットは遠隔操作ですが、おなかが張るなどの症状がなくリラックスした状態で行いましょう。

もともとおなかが張りやすいなどの症状がある人は、できれば産婦人科の医師に相談してから行うと安心ですね。

・ストレッチ

冷たい床で行わないでヨガマットやバスタオルを敷いたり、ラグの上で行いましょう。

食後に行わないこと。

リラックスした時間(お風呂上りや寝る前)がオススメです。
ポイントは呼吸をできるだけゆっくりとし、止めないこと。

深い呼吸はリラックスにもつながりますよ。

妊娠中はリラキシンというホルモンの影響で関節が緩んでいるので、いつもより柔らかい体にビックリするかも??

☆骨盤のツイスト

腰回りに効果的なストレッチです。

1)仰向けに寝て膝を立てる。
2)大きく息を吸って吐きながら右ひざを外側へ倒し、息を吸いながら元に戻す。
3)大きく息を吸って吐きながら左ひざを外側へ倒し、息を吸いながら元に戻す。
4)すべて3回ほど繰り返す。

☆両ひざ倒し

仰向けに寝て、腰をひねるストレッチです。

腰のゆがみも改善してくれるので産後にも使えます。

1)床へ仰向けに寝て両ひざを合わせて立てる。
2)大きく息を吸って吐きながら両ひざを右へ倒し、深呼吸を一回したら戻る。
3)大きく息を吸って吐きながら両ひざを左へ倒し、深呼吸を一回したら戻る。
4)すべて3回ほど繰り返す。

☆猫のポーズ

四つん這いになるストレッチでヨガではおなじみのポーズです。

腰だけでなく背中や肩もほぐれます。
痛みを感じる場合は反らせるのはお休みして控えましょう。

1)床に両手、両ひざをつき四つん這いになる。
  足は肩幅に開き、両肩の真下に手首がくるような位置にする。
2)大きく息を吸って吐きながらおへそを見るように背中を丸める。
  両手の間に頭をいれていきます。
3)息を吸いながら背中を反らせる。
  頭も上げて目線は天井に向ける。
4)息を吐きながら1)の姿勢に戻って深呼吸する。
5)すべて3回ほど繰り返す。

☆開脚ストレッチ

脚を開くことで股関節が柔らかくなります。
痛みのない範囲で行いましょうね。

1)坐骨(お尻の左右にある二つの骨)を床に押し付けるイメージで脚を開いて床に座る。
2)大きく息を吸って吐きながら上半身を前へ倒し、深呼吸を一回したら戻る。
3)大きく息を吸って吐きながら上半身を右へ倒し、深呼吸を一回したら戻る。
4)大きく息を吸って吐きながら上半身を左へ倒し、深呼吸を一回したら戻る。
5)すべて3回ほど繰り返す。

・マッサージ

直接、腰に触れなくてもOK
むしろ痛みのある部分を押すのは症状を、悪化させることがありますので、優しくさする・温める程度に。

お腹を圧迫しないようにうつ伏せは避けて横向きや座って行いましょう。

パートナーにマッサージしてもらうことでスキンシップになり、お互いのコミュニケーションにもなるのでオススメです。

ただ、男性には赤ちゃんがいる状態が理解しにくいので「そこは触ってほしくない」「もっと強く」などこまめに声をかけてあげましょうね。

☆お尻のマッサージ

意外と凝っているお尻の筋肉をほぐします。

1)妊婦さんは横向きに寝る。
2)パートナーは後ろから手でお尻全体を押す。

凝っていると痛みを感じるので強さを調整しながら行いましょう。
指で押すより手のひらを使って広い面積で触れると効果的です。

☆股関節のマッサージ

股関節から内ももをパートナーに足で踏んでもらうマッサージ

内股がほぐれることによって股関節が柔軟になるだけでなく、むくみ予防にもなります。

1)妊婦さんは横向きに寝る。
2)パートナーは立ったまま妊婦さんの内股を足で踏んでいきます。(約1分)
  恥骨に近い部分を足裏全体で優しく行いましょう。
3)反対向きに寝て、同様に行います。

⑤骨盤ベルトや靴の工夫

・大転子(左右の腰骨の下あたりのくぼみ)と恥骨をベルトで固定するタイプが主流です。

おなかの赤ちゃんには影響ないのでギュッと締めても問題ありませんのでご安心を!

*骨盤ベルトは様々なタイプがありますが、助産師や医師に相談してから購入しましょう。

合わないものを使用すると腰痛が悪化することがあります。
また正しく着けることが大事なので実際にレクチャーを受けることをオススメします。

*購入のポイントは必ず試着すること、お腹を直接締めつけないものを選びましょう。

・靴はフラットなものより少しヒールのあるものが◎

3センチほどのローヒールだと重心がとりやすく安定します。
もちろん、ハイヒールはバランスが崩れやすいので妊娠中は避けましょうね。

⑥薬を使う、整形外科を受診する

自己判断での市販薬(湿布などの張り薬も含む)の使用は厳禁!

きちんと医師に処方してもらうか、薬剤師に妊娠していることを伝えて選びましょう。

まずはかかりつけの産婦人科で相談し、必要な時は整形外科を受診。

<薬について>

自己判断で市販薬の使用は控えましょう!

薬に含まれる成分がおなかの赤ちゃんに影響を及ぼしてしまう可能性があります。
(胎児に血液を送っている動脈管という血管が閉じてしまうなど)

市販薬に含まれている成分は飲み薬と同じように張り薬でも注意が必要!!

痛み止めや非ステロイド性抗炎症薬など

・アスピリン
・アセチルサリチル酸
・インドメタシン
・ロキソプロフェン

<坐骨神経痛>

坐骨神経(=腰椎と仙骨から出ている末梢神経が合わさった太い神経)が何らかの原因で圧迫されたり刺激されることで、痛みやしびれを生じること。

原因は3つ

①大きくなったおなかが椎間板や脊柱管を圧迫し、神経へ刺激を与えてしまう。

②女性ホルモン、リラキシンの影響

お産に向けて赤ちゃんが骨盤内をスムーズに通れるように骨盤の関節や靭帯は緩んでいる状態です。

そのことで骨盤や背骨を支える筋肉がいつも以上に緊張し、神経を圧迫してしまう。

③筋肉の緊張
お尻にある「梨状筋(りじょうきん)」という筋肉が緊張することで坐骨神経を圧迫したり引っ張ることが刺激になる。

妊娠初期~お尻の両側、または片側のみに痛みを感じます。
産後も痛みが続くことが多いので注意が必要です。

産後に痛みが続きやすい原因

①インナーマッスルの衰え

妊娠中に伸びてしまった筋肉が産後も緩んだままになってしまう。

②血行不良

血流が滞っていると冷えやむくみになりやすいため。

③関節のゆるみ

ホルモンの関係で産後しばらくは関節が緩んだままになる。
伸びた靭帯が戻るのに3か月程度はかかります。

④姿勢の変化

妊娠中の腰を反らせた姿勢に慣れていると、産後も癖になってしまうため子育ては抱っこしたり目線が低くなることで前かがみの姿勢が増え、腰への負担がかかります。

⑤心身の疲労

睡眠不足や育児への不安からくるストレスも原因の一つに!
脳の鎮静機能が低下してしまうので睡眠はたっぷりと。

対処法は上記の腰痛と同じです。

・腰回りの筋肉を温めほぐすこと。
・正しい姿勢にして腰への負担を軽くすること。
・筋肉をつけてしっかり支えられるようにすること。

<まとめ>

妊娠と腰痛は切っても切れない関係かもしれませんね。

ホルモンの影響もあるので関節のゆるみなど避けて通れませんが、日常生活での工夫次第でよりラクに過ごせると思います。

何か特別なことをするのではなく、毎日の中に取り入れて意識づけできるといいですね。

腰回りの筋肉がついているかどうかで、腰痛の度合いが変わってきますので、無理のない範囲で続けましょう。

日常生活に支障が出てきてしまうときは受診してくださいね。
いきなり整形外科ではなく産婦人科です!

特に初めての妊娠の場合、お腹の張りや痛みと判断しにくいこともあって、実は切迫早産の兆候だったということもありえますので、妊婦さんの専門家が第一選択です。

薬に関しても自己判断せず、必ずかかりつけの産婦人科医師に確認しましょう。

張り薬でも、おなかの赤ちゃんに影響してしまうものもあるので、注意が必要です。

女性はとってもデリケートです。

特に妊娠中はいつも以上に敏感になっていますから、心が疲れていても腰痛に影響してきます。

ストレス発散も含め、穏やかなや心で過ごせるようにケアしていきましょうね。

美しい姿勢は妊娠に関係なく維持していたいものです。

美しくいるために、腰痛にならないために今日から姿勢を意識してみませんか?